僧帽弁形成手術を受けた12歳のミックス犬の病気と治療についてご紹介します。
症例情報
- 犬種:ミックス
- 年齢:12歳10ヶ月
- 性別:女の子(避妊済み)
- 体重:1.8kg
- ご相談内容:心雑音の精密検査と咳が気になるとのことでご来院されました。
診察・検査結果
- 聴診では、心臓にグレード4/6の雑音を確認しました。
- レントゲン検査
(※心臓のサイズを確認しました) - 心臓の超音波検査では、
・重度の僧帽弁逆流
・左心房の拡大(LA/AO 2.8:正常は1.6以下)
・左心室の拡大(LVIDd 2.1:正常は1.7以下)
が見られました。
これらの結果から、
「僧帽弁閉鎖不全症(ACVIMステージB2)」と「三尖弁閉鎖不全症」と診断しました。
治療経過
初診時から、強心薬と利尿剤による内科治療を開始しました。
お薬により心臓の大きさは改善しましたが、その一方で腎臓に負担がかかり、腎機能の低下がみられました。
また、年齢や今後のリスクも考慮し、ご家族と相談のうえ、外科手術(僧帽弁形成術)を行うことになりました。
手術とその後の経過
手術は無事に成功し、術後翌日には僧帽弁からの逆流は完全に消失しました。


ワンちゃんは1.8kgととても小柄なため、通常よりも慎重な術後管理をさせていただき、手術後11日目に元気に退院しました。


現在、手術から3ヶ月が経ちましたが、ワンちゃんはお薬なしで元気いっぱいに走り回っているとのご報告をいただいています。
飼い主様へのメッセージ

ワンちゃんが初めて当院を受診された際には、心臓のサイズがかなり大きくなっており、オーナー様が思っていたよりも重症な状態で受診されました。このまま進行すると左心房の拡大(LA/AO)が3.0に近づき、心臓破裂のリスクが高まる可能性がございました。
心臓病は、日常生活の中では症状に気づきにくいことも多く、進行してから発見されるケースも少なくありません。
そのため、かかりつけの先生から心雑音を指摘された場合には、できるだけ早めに心臓の超音波検査など精密な検査を受けていただくことをおすすめいたします。
近年では、犬の心臓病も外科手術による根本的な治療が可能な時代となりました。当院でも手術をご希望される患者様が増えており、現在は状況に応じて手術まで数ヶ月お待ちいただく場合がございます。また、緊急性が高い場合には、当院以外の施設での手術をご案内するなど、柔軟に対応させていただいております。
心臓手術においては、手術そのものだけでなく、術前・術後の細やかな管理も非常に重要です。
当院の獣医師は、手術前、手術、手術後のケアに関しても豊富な経験と知識を有しておりますので、安心してお任せいただけます。
どんな小さなご不安でも結構ですので、まずはお気軽にご相談ください。
皆さまの大切なご家族の健康を、スタッフ一同、心を込めてサポートさせていただきます。