シャンプー後に発疹と高熱が出て元気がない?

シャンプー後に見慣れない発疹が出て元気がないワンコがいると連絡を受けました。

3歳7ヶ月の男の子のボーダー・コリーさんです。

お家でシャンプーして2日後に嘔吐と下痢して元気がないとのことで来院しました。

身体検査で40.8℃もの発熱が認められ、背中の中央に沿ってボツボツと発疹がありました。

消化器を始めとする全身性疾患を考え、血液検査や超音波(エコー)検査をすぐに行いましたが、どうもはっきりしないようです。

発疹の状態が

  • 背側正中に点状出血?毛穴に一致した発赤病変
  • 下腹部も同様に点状出血?毛穴に一致した発赤病変

と、皮膚の発疹が出血を伴う激しい見慣れないものであったために、皮膚科にも相談となりました。

  • シャンプー後の出血を伴う急性の発疹 
  • 全身状態の悪化 
  • 発熱

この3つが揃う時・・・

これは稀な皮膚科のエマージェンシー(命に関わる急を要する疾患)の可能 性が高いのです。

飼い主様と相談し、すぐに迅速に病理生検(局所麻酔で病変部を含む皮膚を一部採取して、病理検査を行うこと)を実施させてもらうことに致しました。

発疹は広範に広がり、出血を伴っており、病変部を触ると深い病変のようにも感じられました。

美しい長毛の子ではありますが、悪い部分をきちんと観察・処置するために、飼い主様の理解を得て病変部は広く毛刈りさせてもらいました。

予想以上に酷いことが分かりました。

シャンプー後のこのような病態は大きく二つ

  • シャンプー剤に対する薬疹(過敏症、アレルギー反応の激しい状態)=表在性化膿性壊死性皮膚炎(無菌性膿疱性紅皮症)
  • トリミング後の激しい細菌感染症=グルーミング後節腫症

が考えられます。

化膿している様子がありましたので、細菌感染がありそうか?細菌がいるなら何の種類なのか?

そして効果的な抗生物質は何なのか?を調べるために膿を外注検査(培養・感受性試験)に出しました。

この時点では完全には診断が付きませんので、薬疹と細菌感染(グラム陰性桿菌を含む)の両方を考慮した治療を同時進行します。ワンちゃんは入院下で集中治療をすることにしました。

数日後に培養の結果が返ってきました。「緑膿菌」が検出されました。

「グルーミング後節種症」の方が可能性が高いです。

グルーミング後節種症はトリミングやシャンプーの後に起きる激しい発疹(しばしば出血を伴います)を特徴とする皮膚病で主に緑膿菌が原因となります。

感受性試験の結果からは色んな抗生物質が効かないことが分かりました(Rは左の薬に耐性を示していますという印)。

なかなか厄介に感じられましたが、数種類の抗生物質を高用量で集中的に投与し点滴もして、病変部の消毒と抗生物質軟膏の使用を行うことで、改善に向かいました。

病理検査は「化膿性肉芽腫性毛包炎」

臨床的には「グルーミング後節種症の疑い濃厚」という診断が返ってきました。

「緑膿菌」は、時折人の入院患者さんの間で集団感染を起こしたり、慢性の化膿創に発生する少し厄介な菌なのですが、実はそれほど特別な細菌というわけではなく、お風呂やシン ク、キッチンなど身の回りのいつも湿っている場所に普通にいる菌なのです。数10%の健 常な人や動物はこの菌を腸などに普通に持っています。病原性自体は弱いのですが、ごくたまにこんな風に全身性の感染症を引き起こすのです。全身性の感染症では命に関わることもあります。

今回はひょっとするとお家にあったという作り置きの薄めたシャンプーが原因だったのかもしれません(捨ててしまって培養などは行っていないので証明できていませんが!)薄くなったシャンプーは細菌が繁殖する可能性があります。

発症から14日後には元気になって退院し、1ヶ月くらいで外用薬の塗布のみにすることができました。

その後再発もなく大変綺麗になって元気な様子を見せてくれました!

                         

迅速に対応できて元気になって本当に良かったです。滅多にないことですが、シャンプー後
の急激な激しい皮膚病変にはちょっと注意!!
という症例でした!

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